2010年2月28日日曜日

気をとりなおして

先日,久しぶりに明るくない話題をブログに書いたら,多くの方から気づかいのメール・電話をいただきました.ありがとうざいます.思えば,2年前のちょうど今ごろ,ブログに川渡で研究していくことの辛さをつい書いてしまったところ,やはり多くの方から励ましをいただきました.こうやって多くの方がまだ気にかけてくださっている以上,それに応えるように頑張らねばです.

ところで,一昨日は出来たてチーズ&ワインを味わうセミナーが農場でありました.川渡地区の公民館の館長さんがワインアドバイザーの資格を持っていて,その方によるワインの基礎講座&6種類のワインのテイスティングが前半に行われました.ヨーロッパの典型的なワインをいろいろテイスティングして,ぶどうの品種や産地ごとの特徴を教えてもらいました.個人的には,イタリア・トスカーナのサンジョベーゼという品種を中心にした赤ワインが一番好みでした.フランス・ボルドーのワインはずっしりとした渋みと濃厚な味わいがたまらなかったのですが,ちょっと手が届かないなぁと….

後半は,農場で作っているチーズをピザとチーズフォンデュにしたものを,ワインと一緒に食べました.今年のチーズは私が知る限り一番の出来で,生で食べても美味しいのですが,ピザやチーズフォンデュにするとさらに格別でした.ちなみに今回料理を作ってくれた方は,本業は調剤薬局なのですが,そのサイドビジネスで料理の宅配(?)をやっておられるそうです.公民館の館長がソムリエだったり,薬局がシェフだったり,この町には不思議な人がたくさんいます.

惜しむらくは,グラスを洗っている最中にいろいろメモをしたワインリストをなくしてしまったことです.できるだけ早いうちに,またワインを飲まねばです.

2010年2月26日金曜日

それは,心を亡くすこと

最近,忙しいなかで,いろいろな失敗をやってしまったり,やらなければいけない仕事に手をつけられなかったりと,いろいろな人に迷惑かけ,また不愉快な思いをさせてしまいました.

今朝,一緒に仕事をしてくれている人から,私の言動に「相手を尊重していない」「軽ろんじていてる」という態度が表れていると言われてしまいました.もちろん自分ではそんなつもりはなかったのですが,自分自身のこれまでの行動を振り返ってみて,そういうことがたくさんあったなぁと反省しています.

「忙」という漢字は,「心」を「亡」くすと書きます.なので私はこれまで,努めて「忙しい」という言葉を使うことを避けてきました.しかし,それは忙しさのあまり心を亡くしている自分に目を背けていただけなのかも知れません.

昨日の記事に書いたマネジメントの話でいえば,「マネジメント」の手法についてはそれなりに研究していたつもりでした.その反面,メンバーとの信頼関係を築くというもっとも基本的な「心」の部分が,どうやら抜けてしまったいたようです.戦略があってもそこに「心」がなければマネジメントなんてできるわけがない,そういう当たり前のことすら忘れていました.

また,頼まれていた仕事が「心」から抜けていたり,やらなければ行けない仕事があるのに「心」ここにあらずの状態が続いていたり,おかげで多くの人に迷惑をかけてしまいました.

自分自身のメンタルヘルス管理としてここしばらく私は,どんなに仕事が溜まっていても,徹夜をせず,趣味の料理を作ったり,好きなお酒を飲んだりして「心」を休ませるようにしてきました.また,「心」が苦しいときは何人かの方に話を聞いてもらって,「心」を守るようにしてきまいた.しかし,「心」を休ませたり守ったりする一方で,私は「心」が必要な場面でそれを使うための努力を忘れていました.

この記事を読んで不快に思う人がいるかも知れません.また,ここにもっともらしい反省文を書いたところで,すぐにそれが直るわけでもないでしょう.しかし,文章を書くことは自分自身を見つめ直すことになります.また,いくつかの理由があって私の対人コミュニケーション能力には欠陥があるので,不特定に向けた演説や文章という形でしか自分をうまく表現できません.

また,このような私の有様にもかかわらず,あえて厳しいことを言ってくれる人がまだいるというのは,ありがたいことです….

2010年2月25日木曜日

失ったものは・・・

昨年10月くらいから,来週開催されるGCOEの環境機関コンソーシアム主催のイベントのオーガナイザーの仕事をしています.主な仕事は,GCOE支援室や何人かのRAのチームと一緒に講演会やRAのポスターセッションの企画で,私はそのマネジメントを担当しているですが,これがまったく上手くいかなくて途方にくれています.以前も一度,チームの運営で大きな失敗をして,今日もまた今までのマネジメントの悪さゆえにチームが崩壊するようなことがありました.

マネジメントの目的のひとつは組織で働く人の能力を生かすことであると,ピーター・ドラッカーは言っています.ところが,私のこれまでのマネジメントをふりかえってみると,プロジェクトの重要な事項は自分で決断して他の人にお願いするというような,トップダウン的なやり方がほとんどだったと思います.これでは一緒に働いてくれるチームの本来の能力を生かすことができないばかりか,メンバーのモチベーションを下げ,メンバーからの信頼も失うことになります.

ふりかえってみれば,メンバーからいろいろなフィードバックはあったはずなのに,なぜそれに気づくことができなかったのか,反省すべきことばかりです.あまりの落ち込みで,本来やらなければいけない仕事にまったく手をつけられなかったり,車に給油していてるときにガソリンが吹きこぼれて自分にかかっているのにしばらく気づかなかったりと,いろいろ失敗をしてしまいました.

反省すべきことを具体的に書いていたらキリがないのでやめておきますが,ひとつだけ原因をあげるとしたら,慌ただしい周囲とのやり取りや他の仕事の忙いなかで,チームの能力を生かすというマネジメントの本質を見失っていたことが原因なのだと思います.もしまだチャンスがあるなら,今回の失敗を教訓に少しでもチームのみんなが能力を発揮できるような体制を考えなければです.また,他の人の指揮下で働くときは,その人のマネジメントを研究して,参考にしたいと思います.

経験をつんだ後のほうが勉強できる科目は多い.マネジメントがその一つである.--ピーター・ドラッカー

2010年2月24日水曜日

国際フォーラムに参加してきた

21日から24日まで,GCOE主催の国際フォーラム「Ecosytem Management Applying to Ecosystem Adaptability Science」に参加してきました.今回は一応,招待講演者・GCOE関係者とポスター発表に応募してくれた少数の研究者に参加者を限定した非公開のイベントということで内容の詳細は書かないことにしますが,このフォーラムのテーマに関連した分野の最先端をいく刺激的な話が続いて,とても有意義な時間を過ごすことができました.

今回のフォーラムの特徴は,招待講演者もオーガナイザーも若手研究者が中心だったことです.おそらく,招待講演者の大半はポスドクかAssistant Professorだったと思います.それにもかかわらず,発表内容や議論のレベルはきわめて高く,大いに刺激を受けました.ただ,慣れない英語と自分があまりフォローしていない分野の発表が多かったせいで,マトモな質問を思いつけなかったが残念でした.

また,国内からの若手の参加者ともいろいろ話をして,自分が研究に対するモチベーションや自分自身に対する自信を失っていたこと,その結果としてどんどん同年代のトップからおいていかれていることを改めて思い知らされました.もう少し気合を入れて研究に取り組まなければと,気持ちを新たにしました.

シンポジウムが終わったあとは松島にエクスカーションに行き,さらに招待講演者の一組を連れて鳴子温泉に行きました.時差ボケで眠そうでしたが,それでもいろいろお話ができたことは大きな収穫でした.声をかけてくださった方々に感謝です.

2010年2月20日土曜日

カナダの森林は失われている(1/3):森林大国カナダは幻想だった・・・

またしばらくブログの更新をサボっていました.Twitterのせいもあるのですが,それ以上に1・2月は落ち着いて物事を考えるゆとりがなかったのだろうとも思います.しかし,幸いなこと(?)にPEMの課題で本を1冊読まなければいけないので,その記録をブログにまとめたいと思います.

今回読んだのは,森林大国カナダからの警鐘―脅かされる地球の未来と生物多様性という本です.著者のエリザベス・メイさんは法律の専門家である一方で,カナダ・緑の党の党首やカナダ・シエラクラブ代表として,精力的に環境活動を行っています.そのメイさんがこの本を通じて訴えているのは,カナダの森林の深刻な現状です.

カナダといえば,ロッキー山脈や地平線まで続く森林といった,豊かな自然のイメージを多くの人が持つと思います.あるいは,私のように森林関係の分野にいる人からすれば,豊富な資源量を誇る世界最大の森林・林業国という具合でしょうか.しかし,そのカナダの森林のほとんどが,略奪的な林業によって急速に失われており,このままでは近いうちにカナダの林業は崩壊する危機にあるという事実はあまり知られていないと思います.この本は,そのカナダの森林・林業の危機的な現状とそれを引き起こしている構造的な問題点を,これでもかというくらい詳細につづった衝撃的な一冊です.

資源量が豊富なカナダ南部の森林はすでにほとんどが切り尽くされ,現在はアクセスが困難で伐採後の回復が困難な北部の森林にまで,開発の手は広がっています.林業の機械化・効率化にともなって,大面積皆伐の割合が増えていることで,その影響はさらに深刻化しています.また,希少な野生動物の生息地や分水嶺など,本来保護区にすべき地域においても伐採が進行しており,生物多様性の多くがいま失われつつあります.また,多くの州では開発は先住民の居住地にもおよび,州政府・森林業界とのあいだではげしい対立が起きています.

ここまで開発を進めてしまうほど,カナダの森林産業は深刻な木材不足に悩まされています.事実,多くの州で長期的な木材の供給は質・量ともに低下しています.一部の州ではすでに工場が閉鎖されたり,隣国のアメリカ合衆国や他の州から木材を供給してもらうことを余儀なくされています.カナダの森林産業はすでに崩壊の兆しを見せているのです.

「2/3:森林業界が抱える構造的な問題」へ続く)

カナダの森林は失われている(2/3):森林業界が抱える構造的な問題

このような危機を招いた根底には,カナダの森林資源は無尽蔵であるという根強い幻想があります.大半の州では木材資源量の調査が十分に行われておらず,ありえない成長予測にもとづいて年間許容伐採量が設定されてきました.むしろ,州政府・科学者・森林産業はこの仮定を利用することによって,需要にあわせて年間許容伐採量を操作してきました.

一方,希少な野生動物の生息地や森林生態系を保護する制度は,多くの州で有効に機能していないのが実情です.政治的な圧力や森林業界からの要望によって,本来保護区に指定されるべき場所に何の規制もかからないばかりか,規制を解除することすらあるようです.また,希少種を保護する連邦法が近年制定されましたのですが,これを直ちに適応できるのは連邦政府が管轄するわずかな土地に限られており,依然として多くの希少種の生息地が開発の危機にさらされています.

また,州政府の林業に対する手厚い保護政策も,原因の一つと言えそうです.州によって仕組みは若干違うのですが,カナダの森林は基本的に公有林であり,州政府に土地のライセンス料と伐採権料を支払うとこで,企業は森林資源を利用することができます.ところが,このライセンス料・伐採権料は隣国のアメリカ合衆国と比較にならないくらい安く,再造林や森林管理署の運営に必要な費用をまかなえないことすらあるようです.それにもかかわらず,大規模な木材・パルプ工場を建設する際に道路などのインフラ整備を州が行うこともかつてはあったようです.最近では,ライセンス料・伐採権量を値上げするなど状況は改善しているようですが,依然として持続可能でない伐採を州政府が支援しているという状態は続いています.

このように,不確かな資源量予測,森林資源に関わるさまざまな利権,自然保護制度の不備によって,カナダはこれまでに原生林のほとんどを失ってしまったのです.この本の第2部ではカナダのそれぞれの州の現状と問題点がかなり詳しく紹介されています.

「3/3:グローバル経済,そして日本は・・・」へ続く)

カナダの森林は失われている(3/3):グローバル経済,そして日本は・・・

恥ずかしながら,この本を読むまで私はカナダの森林がここまで開発によって失われているという事実を知りませんでした.一昨年に学会で行ったケベック州で,エクスカーションで訪れたわずか数十haの保護区とその周辺のみすぼらしさにガッカリしたのですが,この本を読んでようやく納得がいきました.

この本を通じて描かれているカナダの森林の現状は,あまりにも悲観的です.この本の記述はプロパガンダ的な要素を多く含んでいるので,その内容のすべてが真実であるとは思っていませんが,いずれにしてもカナダの森林・林業が崩壊の危機に瀕しているのは事実でしょう.本書の最後には「総合的な森林管理」「先住民の参画」など,将来の展望がいくつか書かれているのですが,この本で紹介されている現状を考えるとその希望はとても儚く感じられます.この本を読みながら,どうやったらカナダの林業が持続可能であり続けることができるかと考えているのですが,その有効な答えは思い浮かびませんでした.

制度の不備・営利企業からの圧力・政治的利権など,カナダの森林が抱えている構造的な問題は深刻です.しかし,問題の元凶は依然として増加しつづけている木材に対する世界の需要にあります.最大の輸入国はアメリカですが,日本やEU,近年では中国もカナダから多くの木材や紙を輸入しています.東南アジアやアマゾンの熱帯雨林と同じく,カナダの森林もグローバル経済の脅威にさられているのです.海外からの需要がある限り,この問題を解決することはむずかしいでしょう.

メディアの報道や自然保護団体のプロパガンダの成果もあって,最近は熱帯雨林の危機については先進国の多くの企業や消費者が関心を持っていると思います.しかし,カナダをはじめとする北方林が同様の危機にあることが,どれだけ認知されているでしょうか.この問題の責任が,カナダだけでなく消費国の側にあることは明らかです.責任ある消費者として,カナダの森林の現状を認識することがまずは重要なのかと思います.

また,この問題は木材の80%以上を輸入に頼っている日本の資源戦略にも影響を与えます.現在,日本はカナダから多くの木材を輸入しています.手元にある森林・林業白書(平成20年版)の統計によれば,カナダ・アメリカからの輸入量は平成7年から平成18年にかけて減少していますのが,それでもなお輸入される木材の約1/3がカナダ・アメリカ由来です.近い将来,価格が高騰したり輸入そのものが不可能になったときに日本はどうすべきか,真剣に考えなければいけないでしょう.

ところでこの本,ひとつ難をつけるとすれば,記述が冗長でとても読みづらいです.もう少しあっさり書いてくれればいいのにと,読みながら感じました.