2009年10月31日土曜日

統数研ワークショップ

昨日・一昨日と立川の統計数理研究所で開かれたワークショップ「フィールド生態と統計数理」に行ってきました.準備は大変だったのですが,バックグラウンドが違う人たちと熱い議論ができて,とても有意義な時間を過ごすことができました.オーガナイザーの島谷さん,参加者のみなさん,ありがとうございました.

詳しい感想は後日にでも書こうと思っているのですが,私のプレゼンについて一点だけ補足.

今回,私はアカエゾマツの遺伝的多様性の他に「『階層ベイズ革命の構造』フィールド生態学者たちの軌跡を追って」という題で,階層ベイズがフィールド生態学研究者に急速に広がっている現状と問題点について話をしたのですが,私の話し方が悪かったせいでいろいろな誤解を生んでしまったようです.話の主旨は,方法論としての階層ベイズの位置づけを確立していかなければいけないということだったのですが(詳しくは英文のほうで),これがどうもここ1年くらいでベイズを始めた方々を否定するように聞こえてしまったようです.

階層ベイズは便利な道具ですが,その使い方とか結果の見せ方・解釈の仕方などについてはまだまだ議論の余地があると思います.せっかくベイズがここまで普及してきたので,数学やコンピュータの技術面だけでなく,方法論の面からも議論が進めばよいなと思っています.

2009年10月26日月曜日

何を話したらいいか・・・

今週の木曜日と金曜日に立川の統計数理研究所で開かれる研究集会で講演するので,ここ数日はその準備で頭を悩ませています.

統数研での講演は,私がもっとも苦手としているものの1つです.まず聴衆のバックグラウンドが,バリバリのフィールド科学から数理・モデリングまでとても広いので,自分の研究の問題意識や面白さをどうやってアピールするかとても悩みます.さらに,私自身が統計数理をよく分かっていないために,そっちの専門の方とマトモな議論ができないこともしばしばです.今まで何回か統数研で講演したことがあるのですが,自分が満足いく出来だったことは一度もありません.

今回は,今年の生態学会で発表したネタで話をしようと思います.しかし,生態学会のネタをそのまま話しても統数研ではウケないので,何か違う問題提起の仕方が必要です.一応,大まかなアイディアはあるのですが,それをどうやって表現していいのか,検討がつきません.

こういうときは話を聞いてくれる仲間がいるとありがたいのですが,うちの研究室のみなさんは多忙なので,そうもいかなそうです.

本番まで使える時間は,最大でもあと2日.何とかなるといいのですが….

2009年10月23日金曜日

やることが・・・

今月に入ってから,仕事の量が増えてきました.その多くは夏ごろから予想していたものだったのですが,いざいろいろな種類の仕事が一度にやってくると,何から手をつけてよいのか分からなくなってしまいます.時間管理というのはむずかしいですね.

とりあえず先週は,研究室セミナーの準備,もろもろの打ち合わせ,それにマレーシア実習のレポート書きで終わってしまいました.実習のレポートについては,当初はブログに実習レポートの下書きを書いておいて,それをコピペして提出しようと思っていました.ところが,ブログを書く段階でかなりの時間を使ってしまったので,結局週末に追いつめられて書くハメになってしまいました.そのせいで,グループワークのレポートを他の人に校閲してもらう時間がなくなってしまったのは申し訳なかったです.

個人のレポートについては,加筆・修正したうえで近いうちにここで公開したいと思います.

今週は,来週の木曜日に統計数理研究所で開かれる研究集会の準備を主にやっています.当初はせいぜい10人くらいのこじんまりとした集まりだと思っていたのですが,送られてきた案内をみるとなんと30人以上の方が来られるようです.聴衆の専門分野も遺伝・進化・生理・生態からモデリング・統計数理まで幅広いので,どういう話をしたらいいものか,よいイメージが浮かびません.準備に使える時間はあと3日なので,明日からは集中して取り組みたいと思います.

それに加えて,来年3月に行われる生態適応GCOEの環境機関コンソーシアム定例会に付随して行われる,RAポスターセッション+キャリアパスイベントの準備にも取りかかりました.“上”の意向でこのイベントの一部をGCOEのRAが企画することになったので,その立ち上げを私が担当しています.先週は,仙台で“上”と事前打ち合わせしたうえで,RA実行委員候補への呼びかけを行いました.来週の水曜日には,RA実行委員会のキックオフミーティングを行う予定です.

今日は,来週のキックオフミーティングのアジェンダの素案を作って,“上”と一部のRAに送りました.来週の月曜にはすべての参加者にアジェンダを送る予定です.イベントの企画はまったくの素人なので,イベント企画ブログや会議術のサイトなどを参考にやってます.勉強になるのはいいのですが,これに時間をとられすぎるのは痛いです.

もっとも,私が事務的なことの大半をやらなければいけないのは立ち上げのときだけで,次回以降はRA実行委員のみなさんにいろいろな仕事を分担してやってもらおうと思っています.そのためにも,初回はそれなりのものを作らねばです.

さらに来週は,もう一つとても重要な打ち合わせがあります.これについては,打ち合わせまでに重たい宿題が課せられているのですが,さてどうしたものか…

そういえば,今週末のTOEICを受ける予定だったのを,今まですっかり忘れていました.もうすっぽかしてしまいたいです.

再来週は共著論文の打ち合わせとその準備,そして自分のD論プロジェクトを進めるうえでの締め切りがあります.

やることはたくさん,しかし時間は有限.しかも自分のアタマがマトモに働く時間に限定すれば,使える時間はかなり限られています.こうやってやることを書きだして,あとは無理をしようないように着々とやっていくだけです.それがうまくできないから,困ってるんですけどね.学位をとるまでには,もうちょっと時間管理がうまくなっているようになりたいものです.

2009年10月19日月曜日

Rグラフィックス:Rで思いどおりのグラフを作図するために

北大の久保さんが翻訳されたRグラフィックス ―Rで思いどおりのグラフを作図するために―が,ついに刊行されたようです.機会をみて発注しようと思っていたら献本いただいので,ここで紹介したいと思います.

この本は,2005年に刊行されたR Graphics (Computer Science and Data Analysis)の和訳で,久保さんがあとがきで述べているようにRの作図機能の解説としてはもっとも詳しい本です.

生態学の分野ではRがかなり普及してきて,論文や学会発表でRで描いたと思しき図を見ることが普通になりつつあります.Rには非常に強力な作図機能があって,それらを使いこなせばかなり凝った図が描くことができます.しかし,それなりの図を書くためにはそれなりの知識が必要なので,ほとんどの人はイマイチな図に甘んじるか,Rからデータをエクスポートして他の作図ソフトを使っているのではないでしょうか.

この本はRはある程度使えるけれど,デフォルトのイマイチな図しか描いたことがないというレベルの人にちょうどよい本だと思います.私自身,卒論を書いていた2005年の冬に原著を買って,常に側に置いて辞書的に使っていました.

内容はR本体の作図機能(traditional)に加えて,強力な作図パッケージであるlatticeとgridの詳細な解説になっています.特に後半のgridの解説はとても充実しています.それぞれの章はかなりくわしく解説されているため頭から読んで勉強するにはしんどいと思うのですが,ぱらぱら読んでみて必要なところだけを辞書的に使うようにすればよいのではないかと思います.

ちなみに私自身は,R本体だけで図を作るのではなく,Postscriptで出力してからIllustratorで加工することが最近は多いのですが,それでもこの本は手放せません.

ついでに言うと,原著は9,000円前後とかなり高価ですが,訳本は装丁が簡単なのでその半値くらいで買えます.ありがたいことです.

2009年10月13日火曜日

久しぶりのHTML

GCOE関連の仕事のために,久しぶりにHTMLを書きました.

昔はサイトのデザインからJavaScript/CGIまですべて自分でやっていたので,ひとつのウェブサイトを作ることはかなりの重労働でした.特に,当時はブラウザによってHTMLやスタイルシートの解釈が微妙に違っていて,自分が使っていないブラウザで見るとレイアウトが崩れるということがよくあったので,出来上がってからの調整には特に苦労した記憶があります.

ところが最近は,デザインもよく,いろいろなブラウザごとに調整されたテンプレートが無料で利用できるので,最低限の知識と時間があれば簡単にウェブページを作ることができます.便利な時代になったものです.

今回私が使用したのは,Multiflex-3というテンプレートです.デザインがシンプルでレイアウトもいろいろカスタマイズできるので,とても便利です.

サイトのほうはこれから内容を追加していくので,まだ一般から見れる状態にはなっていないのですが,公開されたらここでもお知らせしようと思います.

2009年10月12日月曜日

たまには料理でも

学部の後半から今までの約4年間(!),私は自分の家でほとんど料理をしていませんでした.理由は,一人分を作るのが難しいのと,食べてくれる人がいないと気合いが入らないからです.料理をしたあとの片づけが面倒くさいというのもあります.

というわけで,ここ数年は外食とコンビニ中心の生活が続いていたのですが,これでは食費がかかりすぎるので,少しずつでも自分の家で料理ををすることにしました.

こっちに引っ越して以来ほとんど使っていなかった台所を整理するのは大変でしたが,環境さえ整えてしまえば意外と快適だなと思いました.まだパスタとかリゾットとか手軽に作れて失敗しにくいものが中心ですが,慣れてきたら農場の学生さんたちを招いて,いろいろな料理をふるまいたいと思ってます.

2009年10月7日水曜日

ブログを書いたり

昨日から,マレーシア実習について少しずつブログの文章を書いています.これは自分がマレーシアで感じた様々なことをこのブログを読んでくださっている方と一緒に考えたいという理由の他に,あと10日ほどで締め切りの実習レポートの下書きという理由もあります.いずれにしても,まとまった文章を書くことは,自分の考えが整理されてとてもよいことです.

ところで,今回のマレーシア関連の記事ですが,まずは英語版をすべて書きあげてから,こちらに翻訳・改訂版を掲載していこうと思っています.これは,実習の最終日に一緒にディスカッションをしたマレーシア・サラワク大学(UNIMAS)の学生さんたちにも記事を読んでもらいたいからです.

なので,何かコメントがありましたら,ぜひとも英語版のほうにお願いしたいと思います.日本語でも結構ですので,よろしくお願いします.

2009年10月6日火曜日

持続可能な熱帯林施業

9月23日から10月4日まで,生態適応GCOEのPEMプログラムの国際フィールド実習で,マレーシア・ボルネオ島(サバ州・サラワク州)へ行ってきました.天然林施業の現場を視察したり,ジャングルで動物や植物を観察したり,現地の行政や企業を視察したりと,盛りだくさんの12日間でした.本当は現地で逐次ブログを更新しようと思っていたのですが,ネットが使えなかったり,コースワークやディスカッションで忙しかったりでできなかったので,レポートの下書きを兼ねて数回にわけてここで様子を報告したいと思います.

実習の前半では,まずサバ州における森林管理指針を学び,持続可能な森林施業の現場を視察しました.今回訪問したDeramakot Forest Reserveはサバ州政府が管理している恒久的な森林保護区(Permanent Forest Reserve)の中でも,持続可能な森林施業体系の構築のためのモデル地区として,ドイツの協力のもとで先進的な森林管理が行われています.それらは,日本はもちろん,欧米を含めた先進国の主要な天然林施業指針よりもさらに生物多様性保全と持続可能な森林施業に配慮していると感じました.

具体的には,伐採が行われる地区では,まず作業道に沿ってすべての伐採対象木(DBH>60cm)について毎木調査とGPSによるマッピングが行われます.その際,オランウータンが利用する樹種や突出木は除外されます(これにもかなり細かいガイドラインがあるようです).伐採率は蓄積のせいぜい数パーセント程度であるとのことでした.伐採・搬出作業においても,作業道では土壌流出や踏み固めの影響が最小限になるような配慮がされ,傾斜が急な個所では架線集材が行われます.伐採後は現地の労働者が森林官が決めた施業方針に沿って作業を行ったかどうか査察が行われます.これらの現状から判断する限り,Deramakotの森林施業指針は生物多様性保全や持続的な資源の利用という観点からきわめて優れていると感じました.

ただし,これまで見てきた日本の森林の現状を思い出して,いくつか気になったこともありました.

まず,Deramakot Forest Reserveの森林施業指針自体は優れているものの,伐採跡地の長期的なモニタリングが不十分であると感じました.私が知る限りですが,北海道の天然林の場合,弱度の択伐は林分の外見や蓄積にはほとんど影響を与えないのですが,地表の環境の変化によって更新がうまくいかなくなったり,大きい個体を選択的に伐採することによって蓄積は変わらなくても個体サイズが小さくなっていくという,林分の“劣化”が起こります.熱帯林の場合はいろいろ事情が違うのだとは思いますが,ここで行われている施業指針が本当に将来の林業生産や生物多様性への影響が少ないのか,より長期的なスパンで検証してほしいものだと思います.

もうひとつ気になったのが,経営面からこのような施業指針を将来にわたって続けることができるのかという点です.伐採前の入念な資源調査,きめ細やかな伐採技術,跡地の査察に加えてFSCの森林認証を取得しているため,Deramakot Forest Reserveでは平均的なサバ州の森林に加えてかなりのコストがかかっていることが容易に想像できます.ところが,ここで伐採された木材の値段は,他の林分とほとんど変わりません.

現状では収支はやや赤字気味のようですが,年度によっては利益がでることもあるそうです.これはおそらく,マレーシアがまだ開発途上国であるために,賃金が安く労働力が豊富であることが理由でしょう.しかし,このような状況はせいぜい10~20年程度しか続かないと思います.マレーシアの経済が成熟して賃金の上昇と高齢化が起こったときに,日本のように林業活動を維持できなくなるのではないかと不安を感じました.

この点について現地の責任者によれば,「我々は政府なのでコストは気にしない」という返答が返ってきて,少しびっくりしました.おそらくこれはモデル地区であるDeramakotだけを意識した発言と考えられるのですが,持続的な森林管理をサバ州やボルネオ島全土へ広めていくためには,経営面でも十分成立することが不可欠でしょう.この点についても今後検討してくことを期待したいと思います.

それと同時に,消費国側でも生物多様性の保全や資源の持続可能な利用に配慮した管理をした森林から伐採された木材に対して,相応の負担をしていくことが必要だろうと痛感しました.現状では,Deramakotのような先進的な管理をされた森林でも,違法伐採された森林でも木材の値段はほとんど変わりません.消費者として,自分たちも熱帯林の生物多様性の保全や資源の持続可能な利用に対して責任を持っていることを,実感しました.

伐採後の捕植
伐採計画図.作業道沿いの伐採対象木がすべてマッピングされている.
査察のために,伐根に個体のナンバーを残す.同じものが材にもついている.

2009年10月5日月曜日

社会復帰

昨日,マレーシア実習から帰国しました.移動を含めて12日間,熱帯林や野生動物を観察したり,いろいろな現場を視察してディスカッションをしたり,美味しいものを食べたりと,これ以上ないというくらい充実した日々を過ごしてきました.これも実習を企画してくださった方々,現地で受け入れてくださった方々,そして参加者した学生のみなさんのおかげです.この場を借りて,お礼を申し上げます.

さて,夢のような12日間が終わって,今日から社会復帰です.朝は早起きして久しぶりに温泉に入ってから出勤しました.午前中は今回の出張関連のもろもろの事務手続きで終わってしまいした.生命科学研究科のみなさんはGCOEの支援室でこまごまとした手続きの一部をまとめてやってもらえるようですが,私は一度農学研究科でもろもろの決済をしなければいけないため,旅行計画・旅行報告を農学研究科の様式で書きなおして,さらに支援室で取りまとめてもらっているはずのもろもろの書類の写しなどをすべて用意して,事務に提出しました.とても効率が悪いのですが,農学研究科の事務からクレームがついて書類を書きなおすよりはマシです.

さらに午後は富松さんと青葉山まで出かけて,関係者のみなさんと雲をつかむような話の続きをしました.これからますます忙しくなりそうです.

というわけで,社会復帰初日はとても慌ただしく過ぎました.マレーシア旅行の余韻はほぼ完全に吹っ飛んで,もうぐったりです.今日は早めに休んで,明日から気合いを入れなおして,たまっている仕事を片づけたいと思います.