2009年11月19日木曜日

事業仕分けに対する文部科学省への意見

ブログやTwitterでの議論を見ていると,すでに何人かの方が文部科学省へパブコメを送ったようですね.パブコメを送るべきか,あるいは送りたいんだけどうまく書けないという方のために,私がこれから送ろうと思っている文面を下書きを兼ねて公開します.私の意見に関するコメントも歓迎します.

文部科学副大臣 中川正春 様
担当政務官 後藤斎 様

行政刷新会議事業仕分け対象事業のうち,特別研究員事業(競争的資金(若手研究育成))の縮減について意見を提出します.

今回の事業仕分けに際しては様々な意見があったと思いますが,特別研究員事業などの人材育成に関わる事業については拙速な削減をすべきでないと考えます.

ウェブサイト上で公開された評価コメントを読むかぎり,多くのWG委員が特別研究員事業は人材育成事業としてうまく機能しておらず,むしろ“余剰博士問題”の根源であると考えておられるに思えます.このような批判は以前から行政・学術業界で指摘されており,それを受けてテニュアトラック制度やキャリアパス多様化事業などの事業がいま行われているところです.したがって,(やや誤解や他の制度との混同があるものの)評価コメントにあった「博士養成に関する見直しが必要」であるという意見には原則的に同意します.

しかしながら,特別研究員事業がうまく機能していないことが縮減の理由であるなら,来年度予算において大幅な削減を行うべきではないと,私は強く主張します.その理由は,特別研究員事業が多くの学術分野において最大の若手育成事業であるからです.予算額の削減は特別研究員に採用される人数の削減に直結するため,大幅な削減は数年にわたって博士と将来活躍すべき人材の空洞化を招きます.これは研究者を目指す有望な若手にとって大きな失望であるばかりか,将来の日本の科学技術力の低下につながる恐れがあります.

若手人材育成事業である特別研究員事業については,制度の見直しと予算の削減は別個の問題として扱うべきです.


富田基史

東北大学大学院農学研究科 博士課程後期
日本学術振興会特別研究員(DC)

0 件のコメント:

コメントを投稿