2009年12月11日金曜日

「ゲノムと生態系をつなぐ」か・・・

12月7~9日にかけて,長野県・菅平高原で行われた研究集会「ゲノムと生態系をつなぐ進化研究-環境変動・集団履歴・適応」に参加してきました.総研大の印南秀樹さん山道真人さんによるコアレセント理論の講義・実習や,20名以上の研究者によるエコゲノミクス関連の刺激的な研究発表など,盛りだくさんな3日間でした.私自身も久しぶりにこの分野の最先端の話を聞けて,大いに刺激を受けました.

今回の集会の一番の収穫は,コアレセント理論にもとづいて遺伝子の多型情報から集団のデモグラフィーや選択の履歴を推定する一連の手順と背景となる理論を理解できたことでした.これまで,教科書やセミナーなどで断片的な知識くらいは持っていたのですが,そこから実際にどうやって応用していいのかよく分かっていませんでした.それが,印南さんの丁寧なレクチャーのおかげで,基本的な部分や実際の多型データへ適用まで,だいぶ理解できたと思います.

それに続く山道さんのレクチャーでは,簡単なモデルを例にパラメータ推定の手順をわかり易く紹介してもらいました.これについては,今回届いた日本生態学会誌59(3)の連載「始めよう!エコゲノミクス」の記事「集団内変異データが語る過去:解析手法と理論的背景(その1)」に簡潔に紹介されていますので,興味がある方はそちらを参照してください.

関連研究発表では,エコゲノミクスに関連して,局所適応・遺伝構造・表現型可塑性・遺伝子発現・ゲノム構造などについて,未発表データや研究計画を含めた刺激的な議論が続きました.今回は分野外ということもあってあまり積極的に議論には加われなかったのですが,その分視野を広げてもらった気がします.自分では大した研究をしていないのですが,こうやっていろいろな人が面白いことを教えてくれるのは,ありがたいことです.

個人的に一番面白かった発表は,浜松にある東大附属水産実験所の菊地潔さんによる,フグ類の様々な形質マッピングに関連した一連のお話でした.フグという生き物の面白さはもちろんのこと,地方の実験施設の1研究室であれだけの量・質のデータを出されているというのは,同じ田舎で研究している自分にとって,とても勇気づけられるものでした.見習いたいものです.

しかし,今回の研究集会をふりかえってみて,改めて自分自身の研究はもう「分子生態学」とは言えなくなってしまったなぁと感じました.遺伝マーカーを使った親子解析の研究は5年くらい前から時代遅れになりつつありましたが,みなさんの発表を聴いて,もう完全に「分子生態学」の枠組みから外れてしまったことを実感しました.もちろん普通の(保全)生態学の研究としてはまだまだやっていけるとは思っているのですが,いずれ新しい視点や技術を取り入れていかねばです.

もしこのまま研究者を続けていくなら自分自身がどう振舞うべきか,いろいろ考えさせられる集会でした.

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