2010年2月20日土曜日

カナダの森林は失われている(1/3):森林大国カナダは幻想だった・・・

またしばらくブログの更新をサボっていました.Twitterのせいもあるのですが,それ以上に1・2月は落ち着いて物事を考えるゆとりがなかったのだろうとも思います.しかし,幸いなこと(?)にPEMの課題で本を1冊読まなければいけないので,その記録をブログにまとめたいと思います.

今回読んだのは,森林大国カナダからの警鐘―脅かされる地球の未来と生物多様性という本です.著者のエリザベス・メイさんは法律の専門家である一方で,カナダ・緑の党の党首やカナダ・シエラクラブ代表として,精力的に環境活動を行っています.そのメイさんがこの本を通じて訴えているのは,カナダの森林の深刻な現状です.

カナダといえば,ロッキー山脈や地平線まで続く森林といった,豊かな自然のイメージを多くの人が持つと思います.あるいは,私のように森林関係の分野にいる人からすれば,豊富な資源量を誇る世界最大の森林・林業国という具合でしょうか.しかし,そのカナダの森林のほとんどが,略奪的な林業によって急速に失われており,このままでは近いうちにカナダの林業は崩壊する危機にあるという事実はあまり知られていないと思います.この本は,そのカナダの森林・林業の危機的な現状とそれを引き起こしている構造的な問題点を,これでもかというくらい詳細につづった衝撃的な一冊です.

資源量が豊富なカナダ南部の森林はすでにほとんどが切り尽くされ,現在はアクセスが困難で伐採後の回復が困難な北部の森林にまで,開発の手は広がっています.林業の機械化・効率化にともなって,大面積皆伐の割合が増えていることで,その影響はさらに深刻化しています.また,希少な野生動物の生息地や分水嶺など,本来保護区にすべき地域においても伐採が進行しており,生物多様性の多くがいま失われつつあります.また,多くの州では開発は先住民の居住地にもおよび,州政府・森林業界とのあいだではげしい対立が起きています.

ここまで開発を進めてしまうほど,カナダの森林産業は深刻な木材不足に悩まされています.事実,多くの州で長期的な木材の供給は質・量ともに低下しています.一部の州ではすでに工場が閉鎖されたり,隣国のアメリカ合衆国や他の州から木材を供給してもらうことを余儀なくされています.カナダの森林産業はすでに崩壊の兆しを見せているのです.

「2/3:森林業界が抱える構造的な問題」へ続く)

3 件のコメント:

  1. ご無沙汰して折ります。
    林学出身にも関わらず、このような現状を露ほどもしりませんでした。
    恥ずかしい限りです。
    森林経理学周辺で、Can. J. Forest Res.に論文が受理されるのは結構難しいと聞いていたのですが、当の本国がずさんな管理をしているとは…

    それにしても、写真で見るか限りですが、寿司握るの上手いね
    というより一人暮らしで、握り寿司つくるのを聞いたのはTomita氏が初めてかも

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  2. コメントありがとうございます.私も北米は皆伐天然更新ってのは何となく知ってたのですが,原生林がほとんど残ってないというのは知りませんでした.ホント,恥ずかしい限りです.

    筆者によれば,科学者もむしろ森林破壊に加担しているようで,不正確なインベントリやいい加減な成長予測などはいずれも科学者が行ったものです.林業の現場にいると,科学者も産業界や政治的な圧力から独立した視座をもって物事を見れなくなるのかも知れません.


    寿司は…,まあ遊びみたいなモンですw

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  3. 2009年-2010年「地球温暖化ニュース」から。
    「魚の平均体重がこの30年で半減している。」
    「野生の脊椎動物の個体数は1970年に比べて2000年には60%までにも減少している。」
    現状がここまで酷いとは驚いた。排気ガスを垂れ流す、石油文明がここまで酷いとは。
    乱開発、乱伐採によりすでに世界の原生林の76%が失われました。

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