ちょっと前の話になるのですが,環境科学研究科で生態適応GCOEのPEM講義「環境マネジメント概論」の前半がありました.環境科学研究科の講義と合同だったのですが,参加者の8割くらいが生態適応GCOEの関係者でした.
前半は生態適応GCOEのPIで環境科学研究科の藤崎成昭先生から「開発と環境」「経済発展・人口成長と資源・環境制約」「日本のODA」という3つのトピックで4コマの講義がありました.お話がやや冗長で理解するのが大変だったのですが,国際的な環境マネジメント,特にアジアを中心とする(現在の定義でいうところの)新興国と先進国のあいだの意識のギャップやその背景についての基本的な事項を確認できたのは収穫でした.ただし,そのギャップをいかに埋めるかという点については講義の中でも少し議論があったのですが,悩ましいところです.
後半は日本総研の大泉啓一郎さんによる,「老いてゆくアジア」と題した講義がありました.経済発展に伴う人口増加から少子高齢化・人口減少にいたるまでの過程において,産業構造や人口の移動がどのように変化していくか,そしてそれに伴う様々な問題を紹介してもらいました.
多くの人にとってはあまり実感がないと思うのですが,紹介されたデータによれば東アジアの新興国・途上国においても確実に少子高齢化は進行していて,あと十数年のうちに多くの国が高齢化社会・高齢社会に突入するすると予測されているそうです.それによって,経済成長の停滞や福祉などの問題が近いうちに起こるとのことなのですが,おそらくそれに気がついている人はあまり多くないと思います.まずは,そういう認識を持つことが重要なのかなと思います.
ちなみにこの内容は同名の著書により詳しく紹介されています.まだ詳しく読んでいないのですが,時間があるときにまた紹介したいと思います.
上の文章,本当はずっと前に半分くらい書いて,それからしばらく放置していました.いつにも増して出来が悪いのですが,どうかご容赦ください.
今日からGCOEの実習でマレーシアに来ています.ネットが使えるときにでも随時様子をアップしていこうかと思います.
>東アジアの新興国・途上国においても確実に少子高齢化は進行していて…云々
返信削除おっしゃるとおり知らなかったです。
素人考えで、寿命の延長+女性の社会進出なの?
本をチラ見してみることにしようと思います。
しかし、Tomi-はうまく色々GCOE関係の企画を利用しているな、と思います。
マレーシアでの様子、できれば写真付きで!
お返事おそくなってすみません.ボルネオの様子はこれから逐次アップしていきます!
返信削除少子高齢化ですが,寿命が延びたことに加えて合計特殊出生率の低下が主な原因のようです.
合計特殊出生率を低下させる要因はいろいろですが,もっとも大きな要因は子どもの(経済的な)価値が低下していることにあるといえます.一次産業を主体とした社会では,子どもは貴重な労働力である一方で,高いレベルの教育を必要としないので,子どもを作るほど生産者の便益は増加していきます.高いレベルの技術を必要としない労働集約的な工業が主体となる社会でも似たようなものだと思います.
ところが,経済・社会の発展に伴って単純労働から高度な技術や知識を必要とする知識集約的な社会に移行するしたがって,この状況が変化していきます.知識集約的な社会では子どもは労働力にならない一方で,教育のために大きなコストがかかります.その結果,子ども一人当たりの便益が低下して,子どもを産まなくなります.
これが一番の理由です.統計上もほぼすべて東アジアの国で合計特殊出生率の低下が見られます.
これに加えて,晩婚化・未婚化というのも間接的に出生率の低下に影響しているようです.